映画業界において、派手な宣伝キャンペーンや大規模なプロモーションが当たり前となっている現代。

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」では4370万ドル、約50億円が宣伝広告費として投下されたといわれているよ。
しかし、スタジオジブリは全く異なるアプローチで、世代を超えて愛される作品を生み出し続けています。
その独自のマーケティング手法には、ビジネスマン誰しもが応用できる普遍的な価値、普遍性マーケティング(番狂犬命名)が詰まっています。
作品の力を信じるという哲学
スタジオジブリのマーケティング戦略の根幹にあるのは、作品そのものの力を最大限に信じるという哲学です。
プロデューサーの鈴木敏夫氏は、面白い作品を作れば、おのずと観客はついてくるという信念を持っています。これは単なる理想論ではなく、実際に長年にわたって実践され、成功を収めている戦略です。
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特に象徴的だったのが、2023年に公開された宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」における宣伝戦略でした。
公開前の情報露出を上のポスター1枚のみに絞るという、映画業界の常識を覆す決断。
これは現代の情報過多な社会において、あえて情報を制限することで観客の想像力を掻き立て、純粋に作品と向き合ってもらいたいという願いから生まれた戦略でした。
情報統制がもたらす期待感の醸成
ジブリの情報統制は、単に情報を出さないということではありません。計算された情報コントロールによって、観客の期待感を最大限に高める効果を狙っています。
限られた情報から内容を考察したり、SNSで話題が広がったりすることで、作品への関心が自然に高まっていくのです。
この戦略が成功する背景には、長年にわたって築き上げてきたブランドの信頼性があります。
ジブリ作品なら間違いないという強い信頼感やどんな作品でも見るというコアなファン層が生み出す扇動が、情報が少なくても観客を劇場に向かわせる原動力となっているのです。

ちなみにこの手法には賛否両論ある。
以下が考察だよ。
情報統制の結果は実際にどうだった?
日本では賛否両論。Xの投稿では、ファンの一部が「ミステリー感が最高!」と興奮する一方、事前情報が少なすぎて興行収入が過去作(例えば「千と千尋の神隠し」の300億円)に比べ、87億円と控えめだったって声も (Reddit)。でも、海外ではGKIDSがトレーラーやポスターでガンガン宣伝し、結果、ジブリ史上最高の北米興行収入を記録し、グローバルで1億5000万ドル以上を稼ぎ出した (Reddit)。このコントラスト、めっちゃドラマチックだよね!
映画 | 日本興行収入 | 世界興行収入 | マーケティング戦略 |
---|---|---|---|
君たちはどう生きるか | 87億円 | $149,679,987 | 日本: ノー・マーケティング 海外: 積極的プロモーション |
千と千尋の神隠し | 300億円 | $357,287,850 | 伝統的なプロモーション |
口コミを最大限に活用する仕組み
ジブリは観客自身の言葉による口コミの力を非常に重視しています。
派手な広告よりも、実際に作品を観た人々の感動や評価が、次の観客へと繋がっていくという考え方です。特に最近では、SNSを中心に観客の感想や考察が活発に飛び交い、それが大きな話題となることで、自然な形で作品の認知が広がっています。
この口コミ戦略が効果的に機能するのは、作品のクオリティが高く、観客に深い感動を与えることができるからこそ。質の高い作品体験が、観客を自発的な宣伝者に変えていくのです。

これは一種、AISASモデルにもつながるね!
体験型マーケティングの先駆者として
ジブリは映画だけでなく、ファンがその世界観に浸れる場所を提供することで、ブランド体験を深めています。
2001年にオープンしたジブリ美術館では、限定の短編映画も上映され、訪れる人々に特別な体験を提供しています。
さらに2022年にはジブリパークが開業し、まるで映画の世界に入り込んだような体験ができる場所として人気を集めています。


これらの施設は単なる観光地ではなく、ジブリの世界観を五感で体験できる場所として機能しています。
これは映画を観た後も、その感動を持続させ、深めることができる仕組みなのです。
デジタル時代への柔軟な対応
かつてはデジタル配信に慎重だったジブリも、時代の変化に合わせて柔軟に対応しています。
例えば2019年以降、海外ではHBO MaxやNetflixでの配信を開始し、若い世代や新しい市場へのリーチを広げました。ただし、あくまで中心は劇場での映画体験であり、その価値を重視する姿勢は変わっていません。
また、作品の場面写真の提供など、ファンが作品を楽しみ、共有できる仕組みも整えています。これは現代のSNS文化に適応しつつも、作品の価値を損なわない範囲での展開といえるでしょう。
国際展開における文化的配慮
海外展開においては、ディズニーやGKIDSといったパートナーと連携し、各地域の文化に合わせたアプローチを取っています。例えば、アメリカ向けのポスターでは超自然的な要素を強調するなど、現地の観客に響く要素を考慮しています。
一方で、作品自体は一切の編集を許さないという方針を貫いています。これは作品の芸術性を守りつつ、世界中のファンに本物のジブリ作品を届けるという姿勢の表れです。
継続的なブランド価値の構築
ジブリのマーケティング成功の最大の要因は、短期的な興行収入の最大化ではなく、長期的なブランド価値の構築を目指していることです。
一つ一つの作品に妥協なく取り組み、観客との信頼関係を大切にすることで、世代を超えて愛されるブランドを築き上げています。
この姿勢は、現代のビジネスにも重要な示唆を与えています。
目先の利益を追求するのではなく、顧客との長期的な関係性を重視し、本質的な価値を提供し続けることの重要性を、ジブリは身をもって証明しているのです。
まとめ
スタジオジブリのマーケティング戦略は、作品の力を信じ、観客との深い絆を育むことを中心に据えた、独自の手法です。情報統制による期待感の醸成、口コミの最大活用、体験型マーケティング、そして何よりも作品のクオリティへのこだわり。これらの要素が複合的に絡み合い、強固なブランドを築き上げています。