なぜか売上が低迷?「お客様は神様病」の恐ろしい正体

マーケティング
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「お客様は神様です!」なんて耳に心地よいフレーズを、あなたの会社でも合唱していませんか?もしそうなら、ちょっと立ち止まって考えてみてください。その美しいスローガン、もしかすると会社の売上をじわじわと蝕む、とんでもない病原菌かもしれません。

「顧客第一主義」と聞くと、誰もが頷きたくなるような響きがありますよね。でも、実はこの「お客様ファースト」が、多くの企業を奈落の底へと引きずり込む「甘い罠」である可能性が高いのです。今日は、なぜこの一見、聖人君子のような考え方が、ビジネスの世界ではまさかの「戦犯」になり得るのか、その奥深いワケを紐解いてまいりましょう。

「顧客第一主義」に潜む3つの恐ろしい落とし穴

「お客様は神様」と盲信するがゆえに、企業がハマってしまう、これだけは知っておくべき3つの落とし穴をご紹介します。

落とし穴その1:全員野球は非効率の極み

「すべてのお客様に最高のサービスを!」なんて意気込んでいる会社に限って、なぜか疲弊しているように見えませんか?マーケティングの世界で古くから語られる「パレートの法則」、ご存知でしょうか。これは「売上の80%は、たった20%の優良顧客からもたらされる」という、ちょっと身も蓋もない真実です。

それなのに「顧客第一主義」にどっぷり浸かると、会社はまるで広大な牧場で「迷える子羊」を平等に追いかける牧羊犬のようになります。

つまり、莫大な利益をもたらしてくれるVIP顧客から、些細なことでクレームを連発する「困ったちゃん」まで、同じ情熱とリソースを注ぎ込んでしまうのです。リソースの無駄遣いにもほどがありますよね。

実際にあった話ですが、私の過去いた会社で「全てのお客様に分け隔てなく最高のサポートを!」とした結果、最もライトなサービスを提供しているお客様にも、VIPプランのお客様と全く同じ手厚いサポートを提供し始めました。

その結果どうなったかというと、全体でみたときのサービスレベルが低下して、顧客ロイヤリティが低下、売り上げも20%減くらいしてしまいました。

落とし穴その2:価格競争という名の地獄絵図

「お客様のためなら、もっと安く!」という崇高な(?)精神で、価格を下げてばかりいる企業は終わってます。完全に終了してます。

ターゲットを絞らず、ひたすら価格で勝負しようとすると、待っているのは際限のない値下げ競争という泥沼です。

スターバックスのコーヒーが、缶コーヒーの何倍もの値段でも飛ぶように売れるのはなぜでしょう?彼らは決して「安さ」で勝負していません。彼らが狙っているのは、コーヒーを飲む「体験」や「ブランド」に価値を見出すお客様です。

「お客様第一主義」の名の下に安売りすればするほど、あなたのブランド価値は下がり、過去の牛丼戦争のように誰も得しない消耗戦に巻き込まれてしまうのです。

落とし穴その3:ノーと言えない「忖度文化」の蔓延

心理学には「認知的不協和」という面白い概念があります。

人は、自分の言動に一貫性を持たせようとする生き物です。「お客様は神様」と一度掲げてしまうと、従業員はどんな理不尽な要求にも「ノー」と言えなくなってしまう、という恐ろしい現象が起こるのです。

これが続くと、どうなると思いますか?優秀な人材は「こんな理不尽な会社は嫌だ!」と次々と辞めていき、残された社員は疲弊しきって、やがて提供されるサービスの質そのものが低下します。

最終的には、本当に大切にすべき優良顧客までもが「あれ?なんかサービス悪くなった?」と感じて離れていく、という負のスパイラルに陥ってしまうのです。

成功企業は「お客様を選んでいる」

世の中を見渡してみると、面白いことに、業績絶好調の企業ほど「お客様を選び抜いている」という事実があります。

例えば、アップルは「シンプルで美しいデザイン」を愛する人以外は、ほとんど相手にしません。テスラは「環境意識が高く、新しいテクノロジーにワクワクする」人々をピンポイントで狙っています。

彼らは決して「すべての人に愛される製品」を作ろうとはしていません。そうではなく、「この人たちにだけは最高の価値を提供する」という強い意思を持って、ビジネスを展開しているのです。

これこそが、マーケティングの醍醐味であり、成功への最短ルートなのです。ターゲットを明確に絞り込み、その選ばれしお客様にとって、まさに「これしかない!」と思えるような最高の価値を提供すること。そうすることで、高い利益率と、揺るぎないブランドロイヤリティを築き上げているのです。

現場から実践できる!「お客様選別術」で会社の空気を一変させる方法

では、具体的にどうすれば、この「お客様選別術」をあなたの会社で実践できるのでしょうか?ご安心ください、そんなに難しいことではありません。

ステップ1:お客様を「三段階」に分けてみる

まずは、あなたのお客様をざっくりと3つのタイプに分類してみましょう。

  • A級お客様: あなたの会社に高い利益をもたらし、何度もリピートしてくれる、まさに「神様の中の神様」のような方々。
  • B級お客様: 平均的な利益率で、普通に利用してくれる、まさに「ご近所付き合い」のような方々。
  • C級お客様: 利益率は低いのに、なぜかクレームばかりつけてくる、できれば「そっと距離を置きたい」方々。

ステップ2:タイプ別で「おもてなし」を変える

次に、それぞれのタイプのお客様に対して、おもてなしの仕方を変えてみましょう。

  • A級お客様: まさに「VIP待遇」です。特別なサービスや、他のお客様には秘密の優待プランなど、最高の感謝を伝えてください。
  • B級お客様: 標準的なサービスを提供しつつ、さりげなく「もっと良いものがあるんですよ」と、アップセル(より高額な商品やサービスへの移行)をご提案してみるのも良いでしょう。
  • C級お客様: 必要最低限のサービスに留め、場合によっては「ご縁がなかった」と、潔く取引をお断りする勇気も必要です。これは「冷たい」のではなく、会社全体を守るための「賢い」選択なのです。

ステップ3:メッセージで「本当のお客様」を呼び寄せる

そして最後に、あなたの会社が本当に大切にしたいお客様に向けて、メッセージを発信しましょう。

「すべてのお客様に」という漠然とした言葉ではなく、「〇〇な方に、最高の価値を提供します!」というように、具体的で魅力的な言葉で語りかけるのです。

そうすれば、あなたの本当に届けたい価値を求めているお客様が、磁石に引き寄せられるように集まってきてくれるはずです。

あなたの会社を「番狂わせ」で大逆転させる時が来た!

「お客様は神様」という、一見すると美しい響きに、もう惑わされる必要はありません。本当に大切なのは、「あなたの会社にとって正しいお客様に、あなたの会社が提供できる最高の価値を、最も効果的な方法で届けること」なのです。

今日から、あなたもお客様を選び抜くという「聖域なき改革」に挑戦する勇気を持ってみてください。そうすれば、売上も利益も、そして何より働く社員の満足度も、劇的に改善していくのを目の当たりにするでしょう。

それが、あなたのビジネスにおける、まさに「番狂わせ」の大逆転劇の始まりになるかもしれません。

さあ、常識をひっくり返す準備はできましたか?

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