2023年時点で月間アクティブユーザー数(MAU)が9500万人を超えるプラットフォームであるLINE日本の通信系の覇者ともいえます。
しかしあまり知られていませんが、の成功は、戦略的かつ日本市場に特化したマーケティング手法に支えられています。

LINEが日本で採用したマーケティング手法から、文化的・社会的な特性を理解した戦略の取り方をお伝えします!
LINEがのし上がったその手法を一挙公開
災害時のタイムリーなリリース
LINEは2011年の東日本大震災時に、Naverの日本支社が内部通信ツールとして開発したアプリを一般公開しました。
この時期、従来の通信インフラが機能不全に陥り、インターネットベースの通信手段が強く求められていました。
LINEはこの社会的ニーズに応えることで、迅速にユーザーベースを拡大。
無料の音声通話やメッセージング機能が、緊急時のコミュニケーションツールとして認識されました。災害という市場機会を適切に捉え、開発から公開まで短期間で対応したことで、市場の空白を埋めることに成功しました。
2011年のリリース後、LINEは日本市場を席巻し、短期間で主要なメッセージングアプリとなりました。

あまり知られてないんだけど、LINEは東日本大震災がトリガーになってリリースされたんだね。そしてNaver…懐かしい…。
日本にローカライズされた機能の提供(特にスタンプ)
日本ではアニメやキャラクター文化が広く浸透しており、コミュニケーションにおいて視覚的要素が重視されます。LINEはこの文化的特性を理解し、スタンプや絵文字を豊富に提供することで、ユーザーの感情表現を豊かにしました。
また、LINE NewsやLINE Payなど、日本市場向けのサービスを次々と展開し、多機能化を進めました。
ちなみに海外ではLINE TVのようなサービスも展開されています。しかしそれを日本に導入しないのも「やらないことを決める」ローカライズ手法でしょう。
日本のユーザーの嗜好を深く理解し、製品に反映させることで、受け入れられやすくなったのです。
さらに、スタンプのようなインタラクティブな機能は、ユーザーの継続利用を促進する効果がありました。
特にスタンプ機能は若年層に高い人気を博し、LINEのブランド認知度と利用頻度を大きく高めることに貢献しました。
チャリティーキャンペーンを通じたブランドイメージ向上
日本では企業の社会的責任(CSR)が消費者の信頼に大きく影響します。
LINEはこの点を活かし、2013年の「Pray for the Philippines」や2016年の「Support Kumamoto」など、災害支援のためのチャリティースタンプキャンペーンを実施しました。これらのキャンペーンの収益は被災地支援に寄付されました。
社会貢献活動はブランドの信頼性と好感度を高める効果があります。さらにLINEは、スタンプ購入という形でユーザーを巻き込むことで、ブランドとのつながりを強化することに成功しました。
これらのキャンペーンによって、LINEの社会的責任感をアピールし、ユーザーからの深い信頼を獲得しています。
サービスを統合化したスーパーアプリ化によるエコシステムの拡大
ユーザーの離脱を防ぎ、プラットフォームの利用頻度を高めるためには、多様なサービス提供が有効です。
LINEはこの戦略を採用し、メッセージングアプリから、ニュースや決済、ビットコインなどの投資まで、サービスを統合したスーパーアプリへと進化させました。
これにより、ユーザーの日常生活における様々なニーズに対応することが可能になりました。
複数のサービスを一つのプラットフォームに統合することで、ユーザーの利便性を高め、依存度を向上させたのです。また、異なるサービス間でのクロスプロモーションが、ユーザーエンゲージメントを強化する効果もありました。
この戦略により、LINEは単なるコミュニケーションツールから生活インフラへと進化し、ユーザーの離脱率を大幅に低減することに成功しています。
プロモーションとユーザーエンゲージメントの強化
ユーザーとの継続的な関係構築はプラットフォームの成長に不可欠です。
LINEはLINE公式アカウントを活用してユーザーとの直接的なコミュニケーションを図り、キャンペーンやコンテストを通じてエンゲージメントを高めました。
また、LINE広告やLINEポイント広告を活用し、ターゲティング広告でリーチを拡大する取り組みも行っています。自社プラットフォームを活用したプロモーションはコスト効率が高く、効果的です。
さらに、コンテストやポイントプログラムはユーザーの参加意欲を高める効果がありました。
これらの取り組みにより、LINEはユーザーとの関係を強化し、プラットフォームの利用促進につなげることができました。
季節イベントや文化的要素の活用
日本の季節イベントや文化的行事は、消費者との感情的なつながりを築く絶好の機会です。LINEは桜の季節や夏祭り、年末年始などのイベントに合わせたスタンプやテーマを提供し、ユーザーの文化的共感を呼び起こしました。

トーク画面に2月にはバレンタイン、4月は桜、みたいな感じにアニメーションが入るのは当時画期的でした。
また、期間限定のスタンプやテーマは、ユーザーの関心を喚起し、利用頻度を高める効果がありました。
実はこれらのキャンペーンは単なる遊び心ではなく、LINEのブランドとユーザーの親和性を高め、継続的な利用を促進することに大きく貢献しています。
データ駆動型マーケティング
ユーザーデータの活用はマーケティングの精度と効果を高めます。
LINEはユーザーの行動データを綿密に分析し、ターゲティング広告やパーソナライズドコンテンツを提供しました。LINE広告では、デモグラフィックや行動データに基づく精密なターゲティングが可能になっています。
ビッグデータを活用したターゲティングは、マーケティングROIを最大化する効果があります。
また、個々のユーザーに合わせたコンテンツ提供は、満足度とエンゲージメントを大きく向上させました。
データ駆動型アプローチにより、LINEはユーザーごとのニーズに応じたサービスを提供し、高い満足度を実現しています。
戦略の効果と成果
LINEの主要なマーケティング戦略とその成果は以下のとおりです。
戦略 | 主な施策 | 成果 | 指標 |
---|---|---|---|
災害時のリリース | 2011年震災時の公開 | 急速なユーザー獲得 | 数ヶ月で市場支配 |
ローカライズ | スタンプ・絵文字提供 | 若年層のエンゲージメント向上 | スタンプ利用率の高さ |
チャリティーキャンペーン | 災害支援スタンプ | ブランド信頼度向上 | 寄付金額(例: 5877万円) |
スーパーアプリ化 | 多機能サービス統合 | ユーザー依存度向上 | MAU 9500万人(2023年) |
プロモーション | 公式アカウント活用 | ユーザー関係強化 | 広告リーチ拡大 |
季節イベント活用 | 桜関連スタンプ | 感情的つながり強化 | キャンペーン参加率 |
データ駆動型 | ターゲティング広告 | ユーザー満足度向上 | 広告CTR向上 |

MAUは【Monthly Active Users】という意味で、月あたりのアクティブユーザー数を示すよ。
文化的・社会的特性を理解した戦略の取り方!
日本市場でのLINEの成功に学ぶべきポイントとしては、まず市場の空白や緊急ニーズを特定し、迅速に対応することで競争優位性を確立できることが挙げられます。
また、日本市場では文化的要素を製品やキャンペーンに取り入れることが非常に重要です。
チャリティーやCSR活動はブランドの信頼性とユーザーエンゲージメントを高める効果があります。
さらに、単一機能から多機能プラットフォームへの進化は、ユーザーの離脱を防ぎ、長期的な成長を支える効果があります。
ユーザーデータを活用したパーソナライズドマーケティングも、効果的なユーザー体験を提供する上で欠かせない要素となっています。
まとめ
LINEの日本でのマーケティング戦略は、災害時のタイムリーなリリース、ローカライズされた機能、チャリティーキャンペーン、スーパーアプリ化、プロモーション、季節イベント活用、データ駆動型アプローチなど複数の戦略を継続的に実行することで成り立っています。
これらの戦略は日本市場の文化的・社会的特性を深く理解し、ユーザーのニーズに応えることで、LINEを日本で最も成功したデジタルプラットフォームの一つに押し上げました。
マーケターでないにせよ、LINEの事例は市場適合性、ユーザーエンゲージメント、データ活用の重要性を示す貴重な教訓となっています。
日本市場でのデジタルマーケティングにおいて、これらの戦略を参考にすることで、より効果的なアプローチが可能になるはずです!