はじめに
93年間もの歴史を持つキャンディーブランド「メントス」が、最近興味深いマーケティング戦略を展開しています!
昔からの顧客を繋ぎとめながら、新たにZ世代を獲得するための施策は、多くの企業にとって参考になる事例といえるでしょう。

懐古心理とデジタルイノベーションを組み合わせたメントスの取り組みから、世代を超えたマーケティングの極意を探ってみましょう!
ノスタルジア(懐古心理)の力を活用する
英国市場に目を向けてみましょう。
米国でメントスを復活させたのは、1990年代に一世を風靡した「Doo doo doo doo, doo doo, doo wah!」で始まるキャッチーなCMです。「The Freshmaker」というスローガンとともに、日常の困った状況をユニークな方法で解決するというコミカルなCMは、当時の視聴者の心に強く残りました。
このCMを再活用することで、メントスは昔からのファンに懐かしさを提供しつつ、新しい世代にもブランドの個性を伝えることに成功しています。
「私たちはこのアイコン的なジングルを再訪し、現代のシナリオに合わせることで、昔から知っている人にも新しい人にも響くようにしました」と、Perfetti Van Melleのガム・ミント部門ディレクターであるJen Redmondは語っています。

時代に合わせたアップデートが必要
当然、単に昔のコンテンツを再利用するだけでは、新しい世代に響きません。
メントスは、SNSで人気のインフルエンサーたちと協力し、現代の日常シーンに合わせたジングルの活用方法を提案しています。
Adam Waheed、That’s a Bad Idea、Aubrey Gavelloといった海外では有名なインフルエンサーが、駐車場のトラブルやオフィスでのミスなど、現代人が共感できるシチュエーションでジングルを使った新しいコンテンツを制作しました。
また、5月1日からはミュージカルコメディアンのCarter VailとKyle Gordon(TikTokでのジャンルパロディで知られる)が、新しい歌詞でジングルをさらにアップデートする予定だということです。
インフルエンサー選びにおいて最も重視されたのは「ブランドフィット」でした。
人気があるだけでなく、メントスのブランドメッセージを自然にオーディエンスに伝えられるパートナーを選んだのです。
Z世代の遊び場に参入する -Fortniteとメントス
メントスのもう一つの大きな戦略は、Z世代に絶大な人気を誇るゲーム「Fortnite」への参入です。このゲームの「Creative」モードに、「Mentos Fizzooka」という特殊武器を導入しました。(現在は米国のみ)
この武器は、巨大なメントスのロールとコーラの瓶を模したデザインで、プレイヤーが建てた構造物を一撃で破壊できるという特性を持っています。これは、メントスをコーラに入れると起こる激しい反応(噴射実験)をゲーム内で再現したものであり、実生活でも人気の実験をゲーム世界に持ち込んだ形となっています。
「メントスとコーラの実験は今でも多くの人がやっていて、ソーシャルメディアでも話題です。私たちはそのアイコン的な実験を活用し、Z世代とつながる方法を考えました」とRedmondは説明しています。
この「Fizzooka」は毎日100万人以上のプレイヤーが遊ぶ人気マップ(Piece Control 2v2、Piece Control 1v1、Troll Bed Wars、Sky Warsなど)に登場しており、若い世代にブランドを自然に印象づける効果があります。
なぜ両世代へのアプローチが重要なのか
米国ではキャンディー市場は成長を続けており、2024年には540億ドルを突破し、2029年には700億ドルを超えると予測されています。特に非チョコレートキャンディーの成長率が4.9%と高く、ガムとミントの1.9%、チョコレートの0.4%を上回っています。
カテゴリ | 2024年の売上成長率 |
---|---|
ガムとミント | 1.9% |
チョコレート | 0.4% |
非チョコレートキャンディー | 4.9% |
メントスはこの成長市場でシェアを拡大するために、世代を超えたアプローチを取っているのです。
老舗ブランドにとって、昔からの顧客を大切にしながらも新しい顧客層を開拓することは、長期的な成長に不可欠です。
また、現在のメディア環境の不安定さ(例えばTikTokの禁止問題やトランプ政権の関税政策など)に対処するためにも、複数のプラットフォームで柔軟に展開できる戦略が重要になっています。
「変化に対応できる柔軟性が重要です。消費者が何をしているか、どこにいるかを常に考え、彼らに合わせることが大切です」とRedmondは指摘しています。
全世代マーケティングの成功のヒント
メントスの事例から学べる全世代マーケティングのポイントをまとめてみましょう。
懐かしさと革新のバランス
過去の成功要素を完全に捨てるのではなく、現代的な要素と組み合わせることで、新旧両方の顧客にアピールできます。メントスの場合は、90年代のジングルという「資産」を活かしつつ、現代的な文脈で再解釈しました。
世代ごとの居場所を理解する
Z世代がどのようなプラットフォームで時間を過ごしているかを理解し、そこに自然な形でブランドを登場させることが重要です。メントスはZ世代の多くが親しむFortniteというゲームプラットフォームを選びました。
ブランドの本質を保ちつつ表現を変える
メントスは「Fresh」というブランドコンセプトや「メントス×コーラ」という実験の面白さを変えることなく、それをさまざまな形で表現しています。時代や世代が変わっても、ブランドの核となる部分は一貫させることが大切です。
適切なパートナーシップ
インフルエンサーやプラットフォームとの協業においては、単に人気があるかだけでなく、ブランドとの親和性を重視することが成功の鍵です。メントスはインフルエンサー選びの際、ブランドメッセージを自然に伝えられるパートナーを選定しました。
おわりに
メントスのマーケティング戦略は、ノスタルジアと現代のデジタルトレンドをうまく融合させた好例といえるでしょう。1990年代のジングルの再発売とFortniteへのFizzooka導入は、老舗ブランドが時代に合わせて進化しながらも自らのアイデンティティを失わないための優れた取り組みです。
多くの企業が世代間のギャップに悩む中、メントスのアプローチは「懐かしさ」と「新しさ」のバランスを取りながら、幅広い年齢層にアピールする方法を示しています。